今年のお米の値段はどうなる?需要と供給を予想
先日、お米の価格が上昇しているとの報道がありました。やむを得ず、お米の販売価格を値上げするスーパーや、メニューを値上げする飲食店が増えているようです。では、なぜ今年になってお米の値段が上がっているのでしょうか?
今年になってからお米が不足して価格が高騰していると、さまざまメディアで報道されています。では、お米の価格はどのように決まるのでしょうか。ここ数年におけるお米の価格の推移を見てみましょう。
第二次世界大戦後の昭和17(1942)年、日本政府は食糧の需給と価格の安定を目的として「食糧管理法」を制定しました。かつての日本はこの法律により、原則として日本政府がお米の価格を決めて買い取っていたのです。
その後、平成6(1994)年に「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(食糧法)」が公布されました。これに伴って食糧管理法は廃止され、農家が自由に販売できるようになったのです。現在は、需要と供給のバランスによってお米の価格が決まっています。
お米の相対取引価格の推移を見ると、令和3年産米は12,804円と大きく下落しています。これは、新型コロナウイルス感染症の影響により、外食産業でのニーズが低下したという要因が考えられています。
■米の相対取引価格(出荷業者・通年平均)
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全銘柄平均 主食用1等、円/玄米60Kg(税込) |
平成27年産米 |
13,175 |
平成28年産米 |
14,307 |
平成29年産米 |
15,595 |
平成30年産米 |
15,688 |
令和元年産米 |
15,716 |
令和2年産米 |
14,529 |
令和3年産米 |
12,804 |
令和4年産米 |
13,444 |
参考:農林水産省「米の相対取引価格・数量、契約・販売状況、民間在庫の推移等」
令和5年産米の相対取引価格(令和6年6月速報)は全銘柄平均で15,865円と、令和4年産米と比較して10%以上上昇しています。
価格上昇の原因としては、以下の要因と考えられています。
・新型コロナウイルス感染症の流行拡大によるお米の消費低迷に伴い、全国的にお米の生産が抑えられた。
・令和5年夏の猛暑の影響で「粉状質粒 (ふんじょうしつりゅう)」が多かった。
・コロナ禍が明けて外食する機会が増えたことによる需要拡大
・インバウンド(訪日外国人)の増加による需要の拡大
「粉状質粒」とは、主にでんぷんの蓄積が不十分な成熟していない白い粒のお米のことです。「シラタ」や「乳白粒」とも呼ばれます。米粒の中のでんぷんに気泡が入って白く見えるもので、お米の成熟期間に天候の影響を強く受けると発生するとされています。特に、夜間に高温が続くと発生しやすくなります。
炊き上がりや食味に大きな影響はありませんが「米穀公正取引推進協議会」ではガイドラインによって「粉状質粒」の混入割合の基準を15%以下と定めています。
参考:農林水産省「令和5年産米の相対取引価格・数量(令和6年6月)(速報)」
前章で紹介した通り、令和5年産米については昨年と比べて10%以上値上がりしています。では、お米の価格は今後どのようになるのでしょうか。
今年のお米の価格について、現在は昨年と比べると10%以上も上昇していますが、新米が出てくる9~10月には品薄が解消され、価格が落ち着く可能性があります。一方で、今年の夏も猛暑になれば、お米の品質に影響してさらに高くなる恐れもあります。
なお、坂本農林水産大臣が令和6年6月14日に行った記者会見では、記者の質問に対して以下のように答えています。
最近、米価高騰や米不足について、さまざまなメディアで報道がなされていることは承知していますが、一般的な小売価格は、総務省の小売物価統計等を見る限り、一部で報道されているほど上昇していないと受け止めています。 また、一部の店舗で特定の銘柄の仕入れに苦労されたり、欠品がありますが、多くの販売店では主要銘柄について欠品を起こしている状況ではないと認識しています。 5年産米の全体需給については、農水省において毎月把握し、公表している相対取引価格の動向や民間の流通在庫の状況をみると、現時点で主食用米の需給が「ひっ迫」している状況ではありません。消費者の皆様方におかれましても、安心していただき、普段どおりにお買い求めいただきたいと思います。(一部抜粋) |
地球温暖化による影響で、今後も暑さによるお米に品質低下が懸念されますが、暑さに強い品種の開発も進められています。
・にこまる
食味抜群で収量も高い、ヒノヒカリにかわる高温耐性品種
参考:農研機構「品種詳細 にこまる」
・きぬむすめ
「日本晴」熟期の早生極良食味品種
参考:農研機構「品種詳細 きぬむすめ」
・つやきらり
おいしくて暑さや害虫に強く多収の業務用米
参考:農研機構「水稲新品種 つやきらり」
昨年の猛暑による品質の低下や、インバウンド増加などに伴う需要の増大により、昨年と比べてお米の価格が上がっています。しかし、坂本農林水産大臣は記者会見で「需給はひっ迫している状況にないので、安心して普段どおりに買うようにして下さい」と話しています。秋には今年の新米が登場してきます。まとめ買いなどはせず、必要な量のお米だけ買うようにしましょう。
(おいしいごはん研究チーム)
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