タイ米(インディカ米)ってどんなお米?特徴や炊き方、おいしい食べ方を紹介
私たち日本人の食卓に欠かせないお米。日本のお米の生産量は世界第9位で、アジアの国々を中心に多くの国でいろいろな種類のお米が栽培されています。その中でも、最も多く栽培されているのがタイ米(インディカ米)です。ところで、タイ米(インディカ米)とはどんなお米かご存じですか?本記事では、タイ米(インディカ米)の特徴や炊き方、向いている料理などについて紹介します。
世界で栽培されているお米の種類は、10万種以上もあるといわれています。それらを大きく分けると、私たち日本人が普段から食べている「ジャポニカ米(短粒種)」と、タイ米とも呼ばれる「インディカ米(長粒種)」の2つの品種群があります。
世界では、年間約5億1,400万トン(精米ベース)のお米が作られており、その大半をアジアの国々が占めています。生産量が最も多い中国は、約1億4,595万トンで世界全体の30%を占めています。2位はインドの1億3,600万トン、3位はバングラデシュの3,635万トンで、上位の3カ国で全体のおよそ6割にもなります。日本は世界第9位で、生産量は年間約781万6,000トンです。
世界のお米生産量ランキング
順位 |
国名 |
生産量(千トン) |
1位 |
中国 |
145,950 |
2位 |
インド |
136,000 |
3位 |
バングラデシュ |
36,350 |
参考:農林水産省「米をめぐる状況について」
・ジャポニカ米(短粒米)
ジャポニカ米は、私たち日本人が普段から食べているお米です。日本をはじめ、朝鮮半島や中国東北部、台湾のほかに、ベトナムやオーストラリア、アメリカ西海岸などでも栽培されています。短くて丸みのある形をしており「短粒米」とも呼ばれています。
・インディカ米(長粒米)
インディカ米は、世界で最も多く生産されているお米です。ジャポニカ米に比べ、細くて長い形をしていることから「長粒米」とも呼ばれます。主な生産地は、インドや中国南部、東南アジア、ブラジル、アメリカのメキシコ湾岸、中東諸国などです。
平成5(1993)年、日本は記録的な冷夏に見舞われ、全国のお米の作況指数は「著しい不良」の水準となる90を大きく下回る74となりました。その結果、当時のお米の需要量に対して200万トン以上が不足したのです。やがて、値上がりや買占めなどが起こり「平成の米騒動」と呼ばれました。
当時の日本政府は、対応策としてお米を生産している国々に対し、緊急輸入の要請をしました。この要請にいち早く応えたのがタイ政府で、タイで備蓄在庫されていたインディカ米が日本に輸入されました。このことから、インディカ米は俗称として「タイ米」とも呼ばれています。本記事では以降、タイ米(インディカ米)と表記します。
タイ米(インディカ米)は「長粒米」と呼ばれる通り、ジャポニカ米と比べて細くて長い形をしています。また、ジャポニカ米と同じくタイ米(インディカ米)にも、お米に含まれるでんぷんの違いによって「うるち米」と「もち米」があります。ただし、タイ米(インディカ米)のうるち米は、日本のお米に比べてアミロースを多く含むのが特徴です。
日本のお米(ジャポニカ米)のうるち米が含むでんぷんは、アミロペクチンが約80%、アミロースが約20%の割合です。一方、もち米が含むでんぷんは、ほとんどがアミロペクチンです。このアミロペクチンは、粘る性質を持っています。そのため、アミロースが多くてアミロペクチンが少ないタイ米(インディカ米)のうるち米は、粘り気が少なく炊くとパサパサとした食感になります。
タイの高地にある限られた水田では「カオ・ホーム・マリ」というタイ米(インディカ米)の高級品が栽培されています。独特の香りを持つ「香り米」の一種で、炊き上がりが白くて美しいジャスミンの花のようであることから「ジャスミンライス」と呼ばれています。タイ語で「カオ」は「米」、「ホーム」は「良い香り」、「マリ」は「ジャスミン」を意味しています。
一般的なタイ米(インディカ米)は、粘りや香りが控えめでさっぱりした味わいです。一方でジャスミンライスは、特徴的な香りと甘みがあることから、タイ米(インディカ米)の中でも最高級のお米として扱われています。
タイ米(インディカ米)と日本のお米とでは、特性が異なるため調理方法も違っています。タイ米(インディカ米)は「湯取り法」という方法で調理されます。
平成5(1993)年に起こった「平成の米騒動」では、お米の需要量1,000万トンに対して収穫量は783万トンとなり、政府の備蓄米を放出しても約200万トンが不足する事態となりました。そこで政府は、タイなどから緊急輸入することにしました。
当時、日本人のほとんどがタイ米(インディカ米)の味にも調理にも慣れていなかったため、日本のお米と同じように炊き、粘りが強くもちもちとした食感とおいしさを求めていました。その結果、タイ米(インディカ米)はおいしくないという評判が広まってしまったのです。
先ほども紹介したように、日本のお米のジャポニカ米とタイ米(インディカ米)では、お米に含まれるアミロースやアミロペクチンというでんぷんの含有量が異なります。アミロースの比率が低いほど、粘り強くもちもちとした食感になるのです。
ジャポニカ米とタイ米(インディカ米)では、それぞれのでんぷんの特徴を活かして調理方法も違います。ジャポニカ米は、炊くことでお米からでんぷんを溶け出させ、溶けたでんぷんが保水膜としてごはんの表面を包み、甘みや粘りを生み出します。
一方でタイ米(インディカ米)は、たっぷりのお湯で茹でこぼす「湯取り法」で調理されます。「湯取り法」の詳しい調理方法は次の通りです。
1.鍋にたっぷりの水を入れて沸かします。 2.沸騰したらタイ米(インディカ米)を入れ、木ベラなどでかき混ぜながら中火で8分ほど茹でます。 3.火から下ろし、ザルに上げて水気を切ります。 4.水気を切ったタイ米(インディカ米)を鍋に戻し、かき混ぜながら弱火で加熱して水分を飛ばします。 5.パチパチと音がしてきたら火を止め、鍋にフタをして10分ほど蒸らして完成です。 |
最近では、長粒米の良さを引き出す「長粒米モード」が搭載された炊飯器も登場しています。
「平成の米騒動」のときには、タイ米(インディカ米)を日本のお米と同じように調理して食べていたため、おいしくないという評判が広まりました。しかし、タイ米(インディカ米)に向いている料理にすることで、おいしく食べることができます。
ここからは、粘りが少ないタイ米(インディカ米)に向いている料理をいくつか紹介します。
1.カオマンガイ
「カオマンガイ」は、タイで最もポピュラーな料理です。「カオ」はお米、「マン」は油、「ガイ」は鶏肉を意味しています。タイ米(インディカ米)を油で炒め、鶏を茹でたスープで炊いたごはんの上に茹で鶏(蒸し鶏)をのせた料理で、ハーブや香辛料を効かせた甘辛いタレをつけて食べます。シンガポールの「海南鶏飯(ハイナンチーファン)」など、東南アジア各国で似たような料理が親しまれています。
2.ビリヤニ
「ビリヤニ」は、インドやバングラデシュ、パキスタンなどの南アジアで食べられている米料理です。タイ米(インディカ米)と一緒に、肉や魚、野菜をさまざまスパイスと一緒に炊き込む、または蒸し焼き調理します。「ビリヤニ」は、地域によって特徴があり、調理方法や味なども多種多様です。その中の一つである「カッチ」は、ヒンディー語で生(なま)という意味の通り、スパイスやヨーグルトなどでマリネした生肉を使うのが特徴です。
3.ガパオライス
「ガパオライス」は、タイの定番料理「パッガパオガイ」を日本人向けにアレンジした料理です。タイでは「カウ・パッ・ガパオ」という料理で親しまれています。「カウ」はごはん「パッ」は炒める「ガパオ」はバジルの一種であるホーリーバジルのことです。豚や鶏のひき肉と赤パプリカをホーリーバジルと炒めて、ニンニクや唐辛子、ナンプラー、砂糖で味付けします。日本では一般的に、ホーリーバジルより手に入りやすいスイートバジルが使われています。
4.ジャンバラヤ
「ジャンバラヤ」は、アメリカ南部のルイジアナ州で発祥したごはん料理です。起源はスペイン料理のパエリアと言われています。炒めた肉や魚、野菜などに米と水、調味料、スパイスを加えて炊き上げたごはんで、スパイシーでピリッと刺激的な味わいが特徴です。大きな鍋で調理して大人数で食べることが多いため、パーティーの料理として人気です。
5.パエリア
「パエリア」は、日本でも人気のスペイン料理です。スペイン東部のバレンシア地方が発祥の料理で、バレンシア語で「フライパン」を意味します。両側に取っ手が付いた平底の浅くて丸い形のパエリア鍋で調理するお米料理で、魚介類や肉、野菜、お米などの具材を炒め、水とサフランを加えて炊き上げます。
最近では、大きなスーパーマーケットや業務用食材店、輸入食材店などでタイ米(インディカ米)を扱っています。また、インターネット通販でも購入できます。
かつてタイ米(インディカ米)は、お米が不足したときに緊急輸入されたタイ米(インディカ米)のイメージにより、おいしくないイメージがありました。しかし、粘りが少ないタイ米(インディカ米)の特徴を活かした炊き方や料理をすると、とてもおいしくなります。紹介したカオマンガイやビリヤニなどの料理を作り、ぜひタイ米(インディカ米)を味わってみてください。
(おいしいごはん研究チーム)
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