水田から収穫した稲をお米として流通できる状態にするためには、乾燥させてもみがらをこすり落とす(もみすり)という行程が必要です。もみがらをこすり落とすのはもちろん食べやすくするためですが、乾燥させるのはなぜなのでしょうか。 今回は、米作りで乾燥が必要な理由、機械乾燥と自然乾燥はどう違うのかについてご紹介します。
米作りで乾燥が必要なのはなぜ?
米作りで乾燥が必要なのは、長期保存のためと、もみすり時に砕けにくくするためです。それぞれ、詳しく見ていきましょう。
長期保存できるように
お米には、収穫したとき20〜30%の水分が含まれています。水分が多く含まれると、長期保存できないばかりか変質しやすいので、速やかに乾燥させなくてはなりません。変質したお米は斑紋米、ヤケ米、着色粒などと呼ばれ、食べられないわけではありませんが、味が落ちてしまう傾向にあります。

着色粒については、こちらの記事も参考にしてください。
「お米の黒いところは何?黒くなっているお米を食べても大丈夫なの? 」
お米の水分が多いとどうなる?
水分含有量25%のもみ(収穫したばかりのお米)を25℃で保存した場合、わずか6時間程度で変質してしまいます。水分22%のもみであっても、23℃で保存すると3日程度で変質してしまうのです。さらに放置していると、含有している水分によって腐ったりカビが生えたり、芽が出たりして食べられなくなってしまうこともあります。
お米の水分量はどのくらいに調整されているの?
現在では、農作物の規格として水分含有量を15%程度に減らすことが定められています。ただし、14%以下になると「過乾燥米」とされ、品質も食味も落ちることがわかっているので、乾燥させすぎないようにも注意しなくてはなりません。
もみすり時、砕けにくくする
もみすりとは、お米を収穫して脱穀し、乾燥させた後の「もみ」からもみがらを取り除いて玄米にする作業のこと。昔は臼(うす)などで行われていましたが、現在ではゴムロール式や衝撃式など、機械で行われるのが一般的です。

このとき、砕けたり割れたりした「くず米」は選別して取り除かれ、品質の良い玄米だけが袋詰め・出荷されます。もみすりの際、しっかり乾燥させたお米は砕けにくく、お米の品質を保ちやすいのです。
乾燥の方法は?機械乾燥と自然乾燥の違い
 
お米を乾燥させる方法として、機械乾燥と自然乾燥があります。それぞれの詳しいやり方や、違いについて見ていきましょう。
機械乾燥
稲を収穫したら脱穀し、機械にかけて乾燥させる方法です。カントリーエレベーターやライスセンターなどの共同乾燥施設、または農家保有の火力乾燥機で行う機械乾燥が主流です。
共同乾燥施設
共同乾燥施設は、それぞれ以下のような特徴があります。

●カントリーエレベーター(CE)
大規模な穀物の共同乾燥施設で、穀物を一斉に集めて共同で乾燥・調整・ばら貯蔵する。
●ライスセンター(RC)
カントリーエレベーターより規模が小さい、中・小規模の共同乾燥施設。

乾燥の際、急激に乾燥させるとやはり砕けたり割れたりしてしまうお米が増え、品質や食味が落ちてしまいます。そこで、機械乾燥の場合は水分量をある程度下げていったん貯留(一時貯留)し、再び乾燥させて規定の水分量まで下げる「二段乾燥法(休止乾燥法)」が行われています。

これにより、かつては人工乾燥で米の食味が劣ったと言われていましたが、食味を保つことに成功しました。
火力乾燥機の種類
「平形静置式乾燥機」「循環式乾燥機」の2種類があります。

●平形静置式乾燥機
張り込んだ籾に、金網(すのこ)の下から温めた空気、または常温の空気を送って乾燥させるもの。簡単で安価ですが、設置に広い場所が必要で、下層が上層より乾燥しやすいためもみの層の暑さに注意が必要です。

●循環式乾燥機
テンパリング乾燥機とも呼ばれ、張り込んだ籾を乾燥させながら移動させる方法です。自家乾燥用の乾燥機としては最も普及した型で、米粒内部の水分を拡散させ、均一化させながら乾燥させられます。品質を低下させることなく、乾燥時間を短縮できる優れものです。
自然乾燥
稲木と呼ばれる、木材や竹などで作った柱に横木をかけた干し棒に刈り取った稲をかけ、天日干しでゆっくり乾燥させる方法です。地方によって「稲架(はさ、はざ、はせ、はぜ、はで)」「稲かけ(いねかけ、いなかけ)」「稲機(いなばた)」「牛(うし)」など、さまざまな呼ばれ方をします。

そのため、乾燥方法の呼び方も「はざかけ、はぜかけ、はさがけ」などさまざまですが、基本的には同じ天日干し、自然乾燥のことです。
機械乾燥と自然乾燥はどう違う?
機械乾燥と自然乾燥には、それぞれ以下のような特徴があります。

○機械乾燥
・大量のお米を一気に乾燥させられる
・低コストで均質に仕上げられる
・水分量や温度管理がしやすい

○自然乾燥
・ゆっくり乾燥させられるので、割れ・砕けや食味低下が少ない
・穂の形を残したまま乾燥するので、後熟(刈り取ってからさらに熟すこと)が進み、より美味しくなりやすい
・省エネルギーな乾燥方式

機械乾燥は乾燥の速度が早く、大量のもみを一度に処理できますが、自然乾燥は省エネルギーで後熟などの効果も期待できます。このため、自然乾燥も最近では見直されている手法です。 ごはん彩々では、農薬や化学肥料を使わず、天日干しで作ったコシヒカリも取り扱っています。 お米そのものの美味しさを、昔ながらの製法で食べられるコシヒカリ。ぜひ一度ご賞味ください。

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まとめ
お米を流通させるためには、乾燥させてもみがらを取り除く行程が必要です。収穫したばかりのお米は水分含有量が多く、そのままでは変質したり、腐ったりカビが生えたりしやすくなってしまいます。乾燥の方法は機械と自然があり、最近は自然乾燥も見直されています。ゆっくり天日で乾燥させたお米も美味しいので、ぜひ一度食べてみてくださいね。
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