和食の素晴らしさと基本のマナー マナー編

 


和食を提供する料理人(主婦も含め)がいちばん大事にするのが、「おもてなしの心」であり、それが献立や配膳などにも表れています。その和食をいただく際には、「おもてなしの心」に応えるために、いろいろ気を付けたいマナーがあります。家の食卓だったら大目に見られることもありますが、お店では恥をかくことも。そこで、最低限の和食をいただく際のマナーを家庭でも取り入れ、マナー違反なしの食事を楽しみたいものですね。

指導・監修/宗像伸子(管理栄養士・料理研究家)



人を不快にする行為はしないが基本に!

 食欲は人間の三大欲求の一つに数えられる本能でもあるので、本来はガツガツと食べても、何の違和感がないかもしれません。しかし、人が社会性を持ち、人前で食べる機会が増えてきた現代では、本能以外の要素――「人となり」を表す食事をするときの所作(マナー)が大事になってきています。
 もちろん、これは和食だけに限られたことではありませんが、「おもてなしの心」を大事にする和食では、それに応える所作がより重視されます。マナーというと、「正式に習ってないから分からない」「面倒くさい」などと思いがちですが、和食のマナーの基本は「美しく、相手に不快感を与えないこと」に集約されるので、自分自身が美しくない、不快に感じたことはしないように気をつければいいのです。
 まずは、だれもが「これは!」と不快に思うマナー違反の食べ方を見てみましょう。もし日本料理店などで知らず知らずのうちに、このような食べ方をしているなら、すぐに改めるようにしてください。

マナー違反① 犬食い
食器に口をつけて食べるのが、犬食い。小鉢や小皿など手に持ってよい食器は、逆に口に食器を近づけて食べるのがマナー。
マナー違反② にらみ食い
食欲旺盛な若者の宴会などでよく見かける光景ですが、口にまだ食べ物が入っているのに、次に食べるものを物色すること。意地汚い印象を他人に与えるので注意。家庭でも、食べたいものを子どもに食べられやしないかと、お父さんは必死かもしれませんが、我慢、我慢。
マナー違反③ 袖越し
右側にある器は右手で、左側にある器は左手で取ることが原則。これらを逆に行うのはマナー違反になります。
マナー違反④ 膳越し
膳の向こうにあるものを、お箸で直接口に運ぶこと。家庭では、大皿の料理などは、一度取り皿に取ってから口に運ぶように心がけましょう。
マナー違反⑤ 受け吸い
おかわりのごはんや椀物を受け取ったまま食べ始めるのはマナー違反。受け取ったら、必ず一度テーブルに置いてから食べるようにしましょう。


和食では持ってよい器と持ってはいけない器がある

 外食だけでなく、家庭で食べる時に気を付けたいのが器の扱いです。ごはん+一汁三菜の中でも、胸元まで持ち上げて食べてよい器と、NGの器があります。焼き魚、刺身、揚げ物などの主菜や、中皿(鉢)、大皿(鉢)を持ち上げるのはマナー違反。

 一方、ごはん茶碗、汁椀、小鉢(皿)などは、胸元まで持ち上げて食べることができます。さらに鰻重などの重箱やカツ丼などのどんぶりなども、OKです。大皿料理などで食べにくい場合は、いったん取り皿に移してから、手に持って食べるように心がけましょう。


 

 


意外に勘違いしている日本人が多いマナー

 自分では、マナーに気をつけ、上品に振舞っているつもりでもNGという所作もあります。その代表的なのが、手をお皿のようにして食べる「手皿」。汁などが垂れそうな場合は、手ではなく、小皿で受けるようにするのが正しいマナーです。このほかにもいくつか、次のように正しいと思いがちなNGマナーがあるので、注意しましょう。

勘違いマナー① 手皿
勘違いマナー② 逆さ箸での取り分け
気を利かせたつもりでもNG。通常手で持つ部分ですし、衛生面を考えても×です。取り箸を使うか、「直箸で失礼します」と声をかけて取りましょう。
勘違いマナー③ 食べ終わったとき、お椀などのフタを裏返す
お椀のフタを裏返しにすると、椀の塗りを傷つけてしまう恐れがあるのでNGです。
勘違いマナー④ 食べ終わった器を重ねる
器は本来繊細で傷つきやすいもの。重ねるのはNGです。フタがついたものは、元に戻し、ほかの器はそのままにしておきましょう。
勘違いマナー⑤ 魚をひっくり返して食べる
半身を食べ終わったら、骨を箸で持ち、骨を身から離し、下の身を食べるようにしましょう。

*これ以外にも、刺身を食べるとき、ワサビは醤油で溶かない。蒸し物や酢の物を、味が均等になるようにかき混ぜるなどのNGがありますが、少なくとも上記の5つくらいは、マナー違反をしないように気をつけましょう。


箸使いはその人の「心」を表わす

 和食をいただく上で、いちばん顕著にマナーが身についているかどうかがわかるのが、箸使いだと言われています。
昔からの言葉に、「箸先五分、長くて一寸(約3cm)」という言葉があるように、お箸は多くを汚さず使うことがマナー。ごはんに深々と箸を入れるといった食べ方はNG。
 また、一緒に食べている人に不快な気持ちを抱かせるお箸の使い方は、「嫌い箸」とも「忌み箸」とも呼ばれています。楽しく食事をするためにも「嫌い箸」には注意しましょう。特に子どもは、ねぶり箸や迷い箸、握り箸などは行いがち。気付いたらその場で注意して、マナーを守らせるようにしてください。もちろん、大人もNGですよ。一度自分のお箸のマナーを確認してみましょう。

ねぶり箸(もぎ箸)……お箸に付いたものを口で舐めること
渡し箸……茶碗や汁椀の上にお箸を置いて、お箸を休めること。
探り箸……器の中のものを、お箸でかきまわして探ること。
迷い箸……どの料理を食べようか、料理の上をあちこちお箸を動かしまわること。
握り箸(持ち箸)……お箸を持ったまま、手で器を持つこと。
刺し箸……お箸で食べ物を突き刺して取ること。
箸渡し……お箸とお箸で食べ物のやりとりをすること。(火葬の後、死者の骨を拾う際に同じ動作をするので、縁起が悪いとされる)
指し箸……食事中にお箸で、人のことを指すこと。
そら箸……お箸で取った食べ物を、食べずにもとに戻すこと。
たて箸……ごはんにお箸を突き刺して立てること。(死者の枕元に供える枕ごはんと同様なので注意)
涙箸……箸の先から汁をたらすこと。
叩き箸……お箸で食器を叩いて、音を出すこと。
寄せ箸……お箸で自分の手元に料理を引き寄せること。
かきこみ箸……お箸でかきこむように食べること。

 
 これらのマナー以外にも、和食には食べ物によって食べ方のルールがあります。しかし、あまり気にし過ぎては、食事を楽しめなくなってしまうので、まずは同席の相手に不快感を与えない最低限のマナーだけは守って、和食の美味しさを楽しみましょう。

 

 

※上記は和食のマナー編です。和食の基本編はすでに掲載されています。
掲載当時の原本をお読みになりたい場合は、こちら

指導・監修/宗像伸子
女子栄養短期大学専攻科卒業。管理栄養士として、山王病院、半蔵門病院に長年勤務。ヘルスプランニング・ムナカタ主宰。東京家政学院大学客員教授。正しい食生活のあり方を中心に、幅広い栄養指導、講演活動を行っている。「NHKきょうの料理」「NHKきょうの健康」などテレビ、ラジオ、雑誌、新聞などでも活躍。近著に『50歳からの健康ごはん』(海竜社)がある。


 


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