和食の素晴らしさと基本のマナー 基本編

和食という言葉を聞くと、懐石(会席)料理などを思い浮かべ、敷居が高いものと思いがち。しかし基本となっているのは、日本人の主食である「ごはん」に「汁物」と3つの「菜(おかず)」を組み合わせた「一汁三菜」の献立です。和食は栄養バランスにも優れた献立――日本を訪れる外国人観光客へのおもてなしだけでなく、子どもたちにも和食の素晴らしさを伝えていきましょう。そのためにも、その基本となる考え方を学んでおきたいもの。

指導・監修/宗像伸子(管理栄養士・料理研究家)

 

「一汁三菜」の基本的な考え方

 

毎食必ず「一汁三菜」である必要はありませんが、身体のことを考えれば、「エネルギー源」「血や筋肉を作る」「調子を整える」を担う栄養素をバランスよく摂ることができる献立にすることが大事です。


<主食>

エネルギー源となる炭水化物(糖質)を補給。ごはんが基本となります。ごはんはパンとは違い、ごはん自体には塩分が含まれていないので、減塩食としても相応しい主食といえます。

<汁物>

水分補給や口直しするためのもので、味噌汁やお吸い物がそれにあたります。例えば豚汁のように具だくさんで食べ応えのあるもの――野菜や肉、大豆製品などのたんぱく源を組み合わせれば、食事全体の栄養バランスをアップすることができ、おかずを一品減らすことも可能に。

 
 

<三菜>

主菜1品、副菜2品で構成。いわゆるおかずで、主食を美味しくいただくためだけでなく、主食・汁物で不足している栄養素を補います。

主菜(1品)……血や筋肉を形成するのに必要な動物性・植物性たんぱく質を含んだ、肉、魚、卵、大豆などを使った料理――メインディッシュです。

副菜(基本2品)……ビタミン、ミネラル、食物繊維を含んだ、緑黄色野菜、淡色野菜、豆類、芋類、海藻などの煮物や和え物、おひたしで構成するとバランスがとれます。主菜がハンバーグやステーキなど場合、ニンジンやインゲンなどの付けあわせも、副菜の一つと考えてOKです。

*副菜(煮物)、副々菜(酢の物や和え物)などと分けるケースもあります。

香の物(漬け物)……和食で漬け物は副菜にカウントされません。しかし、香の物を用意しておけば、野菜の栄養素の一部を補えますし、独特の旨みが加わり、献立がさらに美味しくなります。

 
 

<ミニアドバイス①>

副菜は作り置きするなどの工夫を!

 
忙しい暮らしの中で、3つもおかずを作るのは大変な場合も多いですね。納豆やお豆腐などの加工食品などを常備したり、日持ちする和え物などを時間がある時に作り置きしたりしておけば、その負担は軽くなります。
 
 

 
 
和食の味を最大限生かす三角食べと口中調味!

 和食の特徴的な食べ方に、ごはんとおかず、汁物を交互に食べる「三角食べ」とそれによって得られる「口中(内)調味」があります。味付けされていない白いごはんを口の中で咀嚼しながら、他の一汁三菜で味付けしていくものです。

 欧米ではフレンチやイタリアンのコース料理に代表されるように、一つひとつの皿を平らげながら食事が進んでいく――いわゆる、そればっかりを食べる「ばっかり食べ(一丁食いとも呼ぶ)」が基本です。

 三角食べをした場合は、「ばっかり食べ」より口中調味によって味への感受性を高めるともいわれていますが、これはおかずを口に入れる量や、順番などによって、味が微妙に変化するからにほかなりません。また、「ばっかり食べ」よりも噛む回数が増え、唾液量が増えるなどによって、満腹感を早く感じられ、食べ過ぎや脂質の摂り過ぎなどを防ぐのにも効果が期待できます。ただしこの場合、意識したいのがゆっくりと少しずつ食べるということ。この方法で食事した方が、早く食べている人よりも肥満が少なく、体重増加が少ないという研究結果も出ています。

 しかし残念なことに、近年「ばっかり食べ」が増え、この特徴的な食べ方(口中調味)に適応できない子どもが増えているという調査報告も。世界無形文化遺産にも登録された和食文化は、本来この食べ方を含めた文化。しっかり、子ども世代に受け継がれるようにしていきたいものです。

 そして一汁三菜の献立を、さらに美味しいものにするための最後の調味料は、「子どものために、家族のために」とひと手間かける、お母さんの愛情であることはいうまでもありません。

 

 

インスタ映えする「一汁三菜」の基本的な配膳の仕方とは?

 日々の食生活の中で、「和食の配膳」をなんとなく行っていたという人も多いのでは? 最近は、ブログやインスタグラムなどに自分の食卓などの写真を上げる人も増えていますが、「和食の配膳」の基本を知っていなかったため、笑われるケースも。また、基本通りに並べれば、不思議と見栄えよくなり、美味しそうに見えてきます。配膳に気を使えば、インスタ映えするだけでなく家族の食欲アップにもつながるので、ぜひ覚えておきたいもの。

<ごはん茶碗を左に、汁椀を右に>

日本の礼法では「左上右下」(左が上位)と考えられ、主食である貴重な作物であったお米(ごはん)は、汁物より上位である左に配膳されるようになったともいわれています。しかし実際には、右手でお箸を持った際に食べやすい並べ方が基本となっており、「食べやすさ」を追求した配膳となっています。

<三菜は奥に>

おかずとなる三菜は、主食のごはん、汁物の奥に置きます。左から副菜(煮物など)、副々菜(和え物など)、主菜の順番で並べるのが正しい配置。ただし地域によっては、三菜の配置が異なる場合があります。特別な席では、その土地柄に合わせた配膳を心がけましょう。

<香の物の位置は?>

漬け物などは、三菜に含まれませんので、その配膳場所に迷う人も多いようですが、基本はごはんと汁物の真ん中となっています。

<お箸の位置は?>

当然、取りやすいようにごはん茶碗や汁椀の手前に置きます。気をつけたいのが向き。お箸は持ち手が右側になるように置きます。また食事中、お箸を使わない時は、箸置きに置くようにします。

<お茶は右奥に>

正式な和食の席では、食事中にお茶は提供されません。でも、家庭では取りやすさ、「食卓の末席」という意味で、右奥に置くのがいいとされています。同じようにしょう油差しなども右奥が定位置です。

*主菜・副菜といった三菜をワンプレートにまとめてもOKですが、手前にごはんを左、汁物を右、そしてプレートは奥にという基本の配膳場所を守るようにしましょう。

 


<ミニアドバイス②>

魚の盛り付け方にもルールが!

尾頭付きの魚をお皿に盛り付ける場合は、必ず頭を左、腹が手前になるようにします。ここにも左上位の考え方が生きています。また、切り身の場合は、皮が上、開いた魚は身を表になるように盛り付けます。切り身で左右対称でないものは、左側が大きくなるように置くのが正解。また魚の食べ方としては、頭の方から尾に向けて食べていくのが基本。

 

 

 

<ミニアドバイス③>

おもてなしの心を表わす副菜の天盛り

煮物や和え物の上に、ミョウガ、ショウガ、木の芽といった香り物を添えるのが「天盛り」。料理に彩りや香りを加えるだけでなく、「この菜には誰も手を付けていません」というおもてなしの心を表わしています。また和え物や小鉢では、土台を太くして、上に細く天盛りすることで、高さを出して盛る「天小地大」という盛り付けが美しいとされます。


※上記は和食の基本編です。和食のマナー編は今後掲載予定です。
掲載当時の原本をお読みになりたい場合は、こちら

指導・監修/宗像伸子
女子栄養短期大学専攻科卒業。管理栄養士として、山王病院、半蔵門病院に長年勤務。ヘルスプランニング・ムナカタ主宰。東京家政学院大学客員教授。正しい食生活のあり方を中心に、幅広い栄養指導、講演活動を行っている。「NHKきょうの料理」「NHKきょうの健康」などテレビ、ラジオ、雑誌、新聞などでも活躍。近著に『50歳からの健康ごはん』(海竜社)がある。


 





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