古くから日本人の主食であったお米は、獣肉をあまり食べなかった頃からの重要なタンパク源でした。明治に入って獣肉を食べることが一般的になってから、そのタンパク源としての価値は軽んじられてきましたが、現代でもやはりお米がタンパク源の一つであることは変わりません。今回は、そんなお米に含まれるタンパク質の量や期待される効果についてお話します。

お米に含まれるタンパク質の量
そもそも、お米に含まれるタンパク質の量はどのくらいなのでしょうか。白米と玄米のそれぞれについて見ていきましょう。

お米に含まれるタンパク質は6.1%
お米の胚乳(普段、白米として食べる部分)に含まれる成分は、以下の通りです。

炭水化物:77.1%
水分:15.5%
タンパク質:6.1%
脂質:0.9%
ミネラル:0.4%

お米(白米)の主成分はデンプンであり、タンパク質の含有量が決して高いわけではありません。このため、タンパク源としての価値は軽視されてきました。しかし、現代の日本人の食生活を鑑みると、肉・魚に次いでお米がタンパク源として多いことがわかっています。つまり、現代人にとってお米は重要なタンパク源の一つなのです。

玄米でもやや増える程度
ビタミンやミネラルが豊富だとされる玄米でも、タンパク質や糖質の含有量は白米と比べて大きく変わるわけではありません。

炭水化物:73.8%
水分:15.5%
タンパク質:6.8%
脂質:2.7%
ミネラル:1.2%

お米に含まれるタンパク質の効果
お米に含まれるタンパク質は、一般的なタンパク質としての働きの他、お米のタンパク質にしかない働きをすることもわかってきました。タンパク質の量によって、お米の味がどう変わるかも含めて詳しく見ていきましょう。

タンパク質の多いお米はあっさり味
お米のもっちり感や粘り気は「デンプン」によるものです。タンパク質の多いお米は、タンパク質の働きでデンプンが水分を吸収したり、膨らんだりするのを抑えてしまいます。また、タンパク質自体も水を通さないので、吸水もしません。

そのため、タンパク質の多いお米は粘り気が弱く、あっさりとした食感です。一般的にふっくらもちもちとして粘り気の強いお米が美味しいと感じられやすいため、現在ではタンパク質含有量を減らす栽培方法が主流となっています。

お米のタンパク質が糖尿病対策に!?
白米タンパク質を摂取することが、糖尿病・糖尿病性腎症に与える影響について調べた研究があります。
参考:なるほど!米の新発見|【全農公式】「NO RICE NO LIFE PROJECT」

まず、アジア人に多く見られる、著しい肥満を伴わない糖尿病のモデルラットを使った実験です。モデルラットに対し、10週間白米タンパク質とカゼイン(乳汁タンパク質)をそれぞれ摂取させて比較したところ、腎機能の改善が見られました。

さらに、欧米人に多く見られる著しい肥満を伴う糖尿病のモデルラットを使った実験も行われました。モデルラットに対し、8週間白米タンパク質とカゼイン(乳汁タンパク質)をそれぞれ摂取させて比較したところ、血糖状態を示す「ヘモグロビンA1c」が優位に低下。糖尿病の進行を遅らせる働きが示唆されています。これらのラットでは、腎機能の改善も見られました。

つまり、白米タンパク質の摂取は糖尿病の進行を遅らせたり、その合併症である糖尿病性腎症の進行を遅らせたりできる可能性が示唆されました。

お米のタンパク質でホルモンバランスを整えられる!?
血糖値をコントロールするホルモン「インスリン」の分泌を促進する消化管ホルモン「インクレチン」の一つ(GLP-1)は、小腸の腸内分泌細胞から分泌されます。これに関連して、タンパク質分解酵素によって白米タンパク質を加水分解した「ペプチド」という成分が、GLP-1にどう影響するか調べた実験があります。
参考:なるほど!米の新発見|【全農公式】「NO RICE NO LIFE PROJECT」

その結果、このペプチドには、GLP-1の分泌を促進したり、分解を抑えたりする作用があると示唆されました。つまり、GLP-1濃度を高め、食後血糖値の上昇を緩やかにする効果が期待できます。

結論として、白米タンパク質やその分解物は、GLP-1の血中濃度を増加させ、糖尿病の進行を抑える作用を持つと示唆されています。米ぬかタンパク質でも同様の作用が見られたので、米タンパク質はいずれも血糖値の調節に対して良い作用をもたらす可能性、ひいては合併症に対しても有益な効果をもたらす可能性が示されたと言えるでしょう。

お米のタンパク質含有量が変わる2つの理由
お米に含まれるタンパク質は、「気象条件」と「窒素追肥量」の2つの条件で変わると考えられています。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

理由①:気象条件
タンパク質の含有量には日照時間・日射量が大きく関係し、成熟期が遅くなればなるほどタンパク質の含有量が高まるという報告があります。
(新潟大学災害復興科学センター年報「地震被災地におけるコシヒカリの成長経過と米粒内タンパク含有率との関係」より)

この調査では、イネの生育期間全般で、日照時間が多ければ多いほどタンパク質含有量は少なくなり、日照時間が少ないほどタンパク質含有量が多くなることがわかりました。同様に、日射量が多いほどタンパク質含有量は減り、日射量が少ないほどタンパク質含有量は増えていたのです。

一方、平均気温についてははっきりとした関係が認められませんでした。気象条件の中でも、日照時間や日射量がタンパク質の含有量に大きく影響することがわかります。

理由②:窒素追肥量
肥料の窒素成分量とタンパク質含有量に相関性は見られませんでしたが、穂肥の窒素成分量とタンパク質含有量には相関性がありました。

穂肥とは、穂のもみを充実させる(お米がきちんと穂の中に育つ)ことを目的とし、出穂の直前に撒く肥料のこと。穂肥のタイミングを間違えると、お米のない穂が育ってしまう率が上がってしまうため、注意が必要な肥料です。

まとめ
お米に含まれるタンパク質は約6%で、玄米でも大きく変わるわけではありません。タンパク質の割合が多いわけではないが、主食として食べるお米は重要なタンパク源の一つです。タンパク質の多いお米はあっさりとした味になるため、タンパク質含有量が少なくなるような栽培方法が主流ですが、白米のタンパク質は糖尿病予防や血糖値調節に良い働きをもたらす可能性も示唆されている良いタンパク質。たまにはあっさり味のお米もいかがでしょうか。
(美味しいごはん研究チーム)
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