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登場する炊き立てごはんやおかずに食欲が刺激される!美味しいごはんが食べたくなる映画たち

「うちの嫁にほしい」といわせしめた沙倉さんのコンバイン操縦術

映画ごはん映画ごはん

沙倉「小さい時から何よりもごはんが大好きなのですが、お米作りに興味を持ったことがなく、今回映画の撮影で初めて知ることになりました。昔からずっと引き継がれているという知恵もとってもすごいことですし、現代の機械もすごいと思いました」

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沙倉さんが語っているように、作品の中では、土用干し*などといった先人たちの米づくりの知恵が披露されているが、農業の近代化の象徴として、スーパーロボット的なフォルムを持つ最新型コンバインが登場している。

*水田の水を抜き、土をひび割れ状態にすること。これによって、土中のガスを抜き、嫌気性の雑菌の繁殖を抑える効果がある。また、稲が水を求めてしっかりと根を張るため、倒れにくい稲に育つ。

安田「コンバインは、今の稲作には欠かせないものなので、モノとしてカッコよく描き、最終兵器感を出しています。でも、このコンバインは最新式のものだと、600~700万円はします。しかも刈取り作業用なので、一年に10日ほどしか使わない。しかも約10年でリプレス(廃棄)されてしまいますから、生産者にとっては、1日7万円ほどの経費負担が強いられるのです」

映画ごはん映画ごはん

 映画の中ではこの最終兵器が壊れ、手作業での刈取りするシーンが出てくるが、その手間や時間効率を考えれば、コンバインが現在の稲作には必需品であることが分かってくる。なにも先人の知恵だけを賛美しているわけではないのだ。そして沙倉さんは、そのコンバインを見事に操縦してみせ、生産者に「うちの嫁に欲しい」といわせしめたという。

沙倉「実際の農家の方が、稲先とコンバインの先を、どのあたりを合わせると真っ直ぐ刈れるとか、曲がり方のコツなどを詳しく教えてくれたので、コンバインの操縦はバッチリでしたね。でも、手での稲刈りが本当に大変で、腰は痛くなったり、手も痛くなったり――鎌を持っている手もですが、稲を掴んでいる左手の方もなんです。〝昔の人はこんなにも重労働をしてたんだな〟と感じました。しかも監督は「端っこ少し手で刈るだけなんで~」と、農家の方にはいっていましたが、数回でOKが出るはずもなく(笑)かなりの広さをスタッフ全員で刈ることに。夕方戻ってきた農家の方は〝こんなに手で刈ったんかいな~〟と呆れるやら、びっくりするやらしていました(笑)」

今年の夏も、撮り直しをしてさらによい作品に!

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 コンバインの故障だけでなく、ヒカリの初めての米づくりには次々にピンチが襲いかかってくる。

安田「ドラマだと伏線がありますが、自然相手の農業では、伏線なしにピンチがやってきます。どんどんピンチがやってくる方がリアルなんです(笑)」

 田んぼ一面の稲が倒伏してしまったり、ひえが稲の間に生えてしまったり……。撮影のために、あえてそのような状況を作ったのだろうか?

安田「全コケ(倒伏)している田んぼは、実はオヤジの田んぼなんです。作付けしていたコシヒカリが長稈だったため、豪雨の影響であんな状況に。4年がかりの撮影だったので、まさにリアルな風景が撮れたわけです」

沙倉「小さな苗から少しづつ育っていく稲。この映画もそんな作品になってほしいと思っています。四季折々の美しい田んぼの風景。日本人にとってかかせないお米作り。そして親子の絆。この3つを融合させるために、何度も脚本を練り直し、撮影し直し、夏の暑さなど、撮影は本当に大変でした。でも4年間頑張っただけの作品になりました。年配の方はもちろんですが、以前の私のように何も知らないという若い方にぜひ観てもらいたいですね」

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 しかし安田監督は、今劇場で公開されている作品がベストだとは思っていない。すでに作品を観た人たちの意見を聞きながら、さらに微調整を加えたり、観客が気になっている部分を足したり引いたりしていこうとしているのだ。

 その一つが、ヒカリが最後に食べるごはんのシーン。撮影に使われたお米は実家で収穫され、7~8分づき精米のものだったため、真っ白にはなっていない。そこは、さらに美味しく見せるために、新たに撮り直す予定にしているという。

安田「小説が加筆や改訂が行なわれるように、作品と完成度をさらに上げて行けるのが、自主製作で作っている映画の良さでもありますね。2018年末のDVD発売までは、それを繰り返していくつもりです」

映画ごはん

沙倉「何気なく毎日食べているお米が昔からのいろんな知恵を使って作られていることやお米の大切さももちろんですが、失敗したけどもう一回挑戦してみようかな? 実家に電話してみようかな? 美味しいごはん食べたいな! などどんなことでもいいのですが、映画を観て一瞬でも何か思うきっかけのひとつになれば嬉しいですね。そのための撮り直しが必要なら、今年の夏も頑張ります(笑)」

*

『ごはん』の3月以降の公開予定(詳しい上映日時に関して、各劇場または未来映画社で確認を)

  • <大阪市>淀川文化創造館シアターセブン
  • <京都市>立誠シネマプロジェクト 4/1(土)?7(金)13:10?、4/8(土)?14(金) 時間未定
  • <香川県・高松市>高松ソレイユ・2 3/11(土)?24(金)時間未定
  • <名古屋市>シネマスコーレ 3/18(土)?24(金)16:00?

都内での上映予定あり(詳細未定)

このほか、地方の公民館などでのホール上映会も予定。

また、教育機関などでのレンタル上映希望の方は応相談

問い合わせ:未来映画社 xxx@osa.att.ne.jp

プロフィール

安田と沙倉
安田淳一
1967年京都府生まれ。大学卒業後、様々な仕事を経てビデオ撮影業を始める。現在は、未来映画社の主幹として、イベントプロデュース、演出、映画製作などマルチな活動を行う。2007年『SECRET PLAN』(37分の短編)で横浜映像天国2007グランプリ(審査員賞と観客賞をW受賞)。2014年『拳銃と目玉焼』は、自主制作の作品であったが、娯楽性と完成度において高い評価を受け、全国6都市のシネコンなどで順次公開された。
沙倉ゆうの
幼顔に愛らしい笑顔、やや古風な佇まいが、昭和の女優の雰囲気を醸し出す。安田監督の『拳銃と目玉焼』ではヒロインを演じた、未来映画社の看板女優。本作『ごはん』でも主演をつとめ、4年にも及ぶ撮影にもかかわらず、泣き言一ついわずに、ヒカリを演じきった。日本一コンバインの似合う女優という異名も!
未来映画社
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