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新春スペシャルインタビュー マラソンを走りきる身体は、ごはんを中心とした食生活で作られる! 高橋尚子さん

レースで走っている痩せた高橋尚子は、
自分本来の身体ではなく、別次元のもの

 両親の愛情をいっぱい受け、「美味しい記憶」を多く持っている高橋さんだが、「子ども時代から大食漢だったわけではないし、食に特別な執着心はなかった」という。自分自身、そして周りから「大食漢」と認められるようになったのは、実業団に入り、競技としてマラソンに取組むようになってからだ。

高橋尚子写真――1995年に実業団に入り、1997年からマラソンを始めたのですが、その頃から食事の量が増えてきました。練習して、食べて寝て、そしてまた練習。その繰り返し。テレビも観ない、コンビニに行くこともなかったので、楽しみは食事だけだったのかもしれません。そして、しっかり練習すると、体が食事を摂ることを要求していました。

 大食漢」といわれるほど、食事の量が多かった高橋さんだが、むやみに食べていたわけではない。むしろ、必要以上に食にこだわっていたといっていい。なぜなら現役時代は、本番のレースに合わせた体重コントロールも欠かせないものだったからだ。

――現役時代、レースで走っている細い高橋尚子が、普通の姿のように捉われがちですが、そのときの仕上げた身体は、ある面異常な身体ともいえます。体脂肪率は4%程度。だからレースを終え減量を気にしなくなると、食欲旺盛になり、すぐに体重が増えていきます。しかし、6~7kg増えたところで、食欲も体重増加もピタリと止まる――そこまで太ると、「もう無理して食べなくてもいいよ」と脳から指令がくるのです。その6~7kg太った状態こそが、私本来の身体なのでしょうね。

 もちろんボクサーと違って、マラソンに体重制限があるわけではありません。しかし、レースに臨むにあたっては、いちばん持久力も出て、早く走れる私なりの理想体重があり、それを目標に仕上げていきます。どれだけ仕上がっているかは、自分の筋肉の張りなどで感覚的に分かりますが、レース前の2週間は1日7回体重計に乗り、微調整を繰り返すことに。食べても、走っても(練習しても)、理想体重と1kgの誤差がない安定した身体にする必要があるからです。もちろん、栄養に関しては管理栄養士さんに、体調管理などに関してはトレーナーさんにと、スタッフのサポートなども受けながらですが……。

 なぜ、そこまでストイックに痩せる必要があるのか? という疑問に捉われたこともあります。しかし「走るため」という目的がぶれないように、自分に言い聞かせていました。最終的に自分の身体を仕上げることに関しては、小出(義雄)監督がどんなに優れていても手を出すことができなかったからです。

 でも、理想体重まで落しきると、楽な気持ちでレースに臨むことができました。しっかり練習はした、体重も守れた。もしこれでタイムが出なかったら、「小出監督の練習メニューのせいだ」といえましたから(笑)。

ひじきなど